近年、チョコレート嚢腫摘出術後にAMHが低下することや、調節卵巣刺激に対する卵巣反応性、採卵数が減少することが問題となっています。
妊娠を目指す女性に対して安易に手術すべきではないという考えが広まっています。
では手術せずに経過を見た場合、卵巣予備能はどう変化するのか?
前向きに観察した調査報告の論文がありましたので記載します。
『子宮内膜症、卵巣予備能低下:チョコレート嚢腫を持つ女性ではAMH低下速度が速い』『Endometrioma-related reduction in ovarian reserve (ERROR): a prospective longitudinal study』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29935810/
内膜症専門外来でチョコレート嚢腫と診断されたが、手術やホルモン療法は不要と判断された40人の女性と、年齢をマッチさせた健康な40人の女性(対照群)に対して血清AMHを測定、6か月後に再検査した。
性的にアクティヴな女性22人に対しては超音波でAFC(胞状卵胞数)を数えた。
対照群40人のAMH値は、初回2.26–5.57ng/mL に分布(中央値4.42)していた。
6か月後再検査では中央値で7.4% (−11.98%-29.33%)低下していた。
一方、チョコレート嚢腫群40人のAMH値は、初回 0.70–4.96 ng/mLに分布(中央値2.83)していた。
6か月後再検査では中央値で26.4% (11.36%–55.41%)低下していた。
22人のAFCは初回8–12個(中央値10個)に分布、6か月後再検査では6.3–10(中央値8個)に減少していた。
チョコレート嚢腫を持つ女性子宮内膜症女性では対照群に比べて、診断時のAMH値は低く、その後の低下スピードも速いと考えられる。
不妊原因としてチョコレート嚢腫が考えられた場合は、早く治療を進めるべきである。
内膜症患者さんの安心材料としては体外受精による出産率は、チョコレート嚢腫の有無で差がないことがすでに知られています。