『精子のDNA損傷を調べる検査、SDF検査について』
一般的な精液検査では精子の量と運動について調べますが、
まれに精液検査に異常がなく、女性側にも明らかな異常が無いのに、
なかなか妊娠に至らないケースがあります。
また、体外受精や顕微授精において、精子や卵子の状態がそれ程悪くないのに、
なかなか良い受精卵が得られない場合があります。
その様なケースにおける原因の一つとして
精子のDNA損傷(SDF: sperm DNA fragmentation)が
関与している場合があると考えられてきています。
受精卵のDNAの半分は精子由来ですから、
これが損傷していた場合は受精卵の発育が悪くなるというわけです。
とはいえ、精子のDNA損傷をどのように調べるのでしょうか?
英ウィメンズクリニックさんでは精子のDNAを検出する事ができる特殊な染色方法によって
DNA損傷がある精子を判別するSCD test(Sperm Chromatin Dispersion test)という方法を採用しています。
② DNA fragmentationがある精子
上の図では正常の精子においては精子の周りにリング状に染色像を認めています。
一方で、DNA損傷がある精子においては精子の周囲に染色像を認めていません。
この様に一見正常に見える精子であっても中身のDNAが損傷している場合があるというわけです。
SDF検査ではDNA損傷を認める精子の割合が30%を超える場合に異常と判断しています。
それでは、この様に染色を行いDNAが正常である精子を選んで顕微授精を行えば良さそうに思えますが、
残念ながら染色してしまうとその精子を顕微授精に使用する事はできません。
という事で、精子のDNA損傷率をできるだけ下げていく必要があるわけですが、
そもそも精子のDNA損傷はなぜ起こるのでしょうか?原因としてはいくつかの報告があります。
①生活習慣(喫煙や肥満、ストレス、睡眠不足、環境ホルモンなど)
②加齢
③禁欲期間
④活性酸素
⑤精索静脈瘤
上記のうち、加齢はどうしようもありませんが、他の要因は対策することができます。
妊活でなかなか良い結果を得られない場合はSDF検査によって新たな対策が得られるかもしれません。