最近、タイムラプス•イメージングという装置で、個々の胚の発生状況を動画のようにみることができるようになりました。
胚の発生は静と動のメリハリが大切で、分割する時は素早く、力を蓄えるときは静かにという胚が最も良い胚であることがわかっています。
『タバコは胚の分割速度を遅くする』
Fertil Steril 2013; 99: 1944(フランス)
本論文は、タイムラプス•イメージングを用いて胚を観察したところ、タバコが胚発生の速度を遅くしていることを示しています。喫煙による妊娠率低下の一因と考えられます。
顕微授精(ICSI)を行った135名の女性(喫煙群23名、非喫煙群112名)から、のべ868個の胚を得ました(喫煙群139個、非喫煙群729個)。
両群間の、年齢、BMI、ホルモン値、パートナーの年齢、精液所見、不妊期間、刺激方法、ピークのE2値、受精率、良好胚率、移植個数に有意差を認めませんでした。
ただし、AMH(3.6 vs. 5.0)およびAFC(胞状卵胞数、15.6 vs. 19.8)は、喫煙群で有意に低くなっていました。
タイムラプス•イメージングでは、喫煙群(9.31時間)のPN出現時間が非喫煙群(11.12時間)より有意に早くなっていましたが、PN消失時間は同じでした。
また、喫煙群(10.97時間)が非喫煙群(8,89時間)より有意に遅くなっていました。
3~8細胞の全てのステージにおいて喫煙群の胚分割の時期が非喫煙群より有意に遅くなっていました。
ICSIを起点とした喫煙群と非喫煙群の
3細胞期到達時間(t3: 39.91時間vs.38.42時間)
4細胞期到達時間(t4: 41.48時間vs.40.79時間)
5細胞期到達時間(t5: 49.97時間vs.48.87時間)
6細胞期到達時間(t6: 53.6時間vs.52.0時間)
8細胞期到達時間(t8: 61.63時間vs.58,46時間)
でした。
喫煙群と非喫煙群の
着床率は13.8%vs.21.2%
妊娠継続率は13.0%vs.30.4%
と有意差を持って喫煙群で低下していました。
タイムラプス•イメージングを用いることで、これまでのようなある一時点での観察では気づかない様々な事実が明らかになってきました。