『男性のデスクワークの時間と精子の質の関係』
男性のデスクワーク時間と精子の質
に関係があることがわかってきました。
ポーランドの研究結果によると
精子DNA断片化率の上げる可能性があるそうです。
精子DNA断片化率とは、損傷したDNAをもつ精子の割合のことで、 20%以上になると受精率や妊娠率が低くなったり、流産率が高くなったりすると言われています。
今回の研究結果で興味深いのは、長時間のデスクワークは精液検査の
結果には影響せず、精子DNAの損傷率を高めたということです。
つまり、病院の検査ではわからないという事です。
◎どんな研究が行われたのか?
ポーランドのポメラニアン医科大学の研究チームは、
大学病院に通院中で、週に35時間以上働く男性254名に、
就労時間とデスクワークの時間を回答してもらい、
デスクワークの時間が就労時間の50%以上の男性と
50%未満の男性に分けて、精液所見や精子DNA断片化率
との関係を調べました。
◎どんな結果だったのか?
デスクワークの時間と精液検査結果は
関連しませんでしたが、
精子DNA断片化率は関連しました。
精子DNA断片化率中央値
デスクワーク50%以上:21.0%
デスクワーク50%未満:16.5%
精子DNA断片化率高値(30%以上)
デスクワーク50%以上:31.0%
デスクワーク50%未満:16.7%
このようにデスクワークが50%以上の男性は 50%未満の男性に比べて精子DNA断片化率が 高くなるリスクが2倍でした。
長時間のデスクワークは精子の質を低下させる要因として考えれます。
◎考えられる要因は?
論文の筆者は、今回の結果の原因として考えられるのは 長時間のデスクワーク、すなわち、長時間、股間を圧迫した状態でいる ことが精巣の温度の上昇を招いたためではないかとしています。
そもそも、精巣の温度は体温に比べて1-2℃低い、 32から35℃の間が適しているとされています。
それは、精子形成に関わる遺伝子の発現レベルが精巣温度が 上昇することで低下し、精子をつくる働きが低下してしまうからです。
そのため、精巣温度の上昇そのもの、また、そのことによる 酸化ストレスの上昇により精子DNAの損傷を招いたのではないかとしています。
◎有効と考えられる対策は?
男性の精巣温度を24時間モニタリングしたイタリアの研究(1)で、 健康な男性でも、車の運転中や仕事中など同じ姿勢で座ることで陰嚢の温度が上昇することを確認しています。
ただし、長時間座って仕事をしている時でも、コーヒーブレイクの時は温 度が急降下していることから、体制を変えたり、 休憩時には歩き回ることで精巣を冷やせるようです。
また、ハーバード大学の研究(2)では、ボクサータイプ(ゆったりしたタイプ)の下着をつける男性は、 その他のタイプの下着(肌にフィットしたタイプ)をつける男性に比べて精子濃度や総精子数、 総運動精子数が多かったとの報告がなされています。
このように日常生活でのちょっとした心がけで、精子の質を維持できることがわかっています。
◎精液検査に問題がなくても
今回の研究では長時間のデスクワークは精子DNA断片化率の 上昇を招いているものの、精液所見への影響はみられませんでした。
このことは、精巣の温度上昇は精子の数や運動率を低下させることなく、 精子DNAを損傷し、精子の質を低下させたことが示唆されます。
精子DNA断片化率の検査はどこのクリニックでも受けられるものではありません。
そのため、たとえ、精液検査に問題がなかったからといって、男性側、 すなわち、精子の問題が妊娠率にマイナスの影響を及ぼさないとは 言い切れないということになります。
特に高齢女性の卵子は精子のDNAの損傷の修復能力が 若い頃に比べると低下すると言われています。
そのため、たとえ、精液所見に問題がなくても、精子の質を低下させないような生活習慣や抗酸化サプリメントを心がけることが大切です。