精子の構造と精液の役割
精子は、頭部、中部、尾部の3つの構造から成ります。
その格好は、よくおたまじゃくしに例えられます。
遺伝情報のDNAを含む核は、丸く膨らんだ頭部にあります。
中部には精子の運動に必要なATPをつくり出すミトコンドリアが詰まっていて
実際に運動するのは細長い軸糸が伸びた尾部の役目です。
射精された精子は、尾部のしっぽを振りながら巧みに前へと進んでいきます。
頭部の先端には酵素を抱え、卵子に出会うとその酵素を放出して卵子の膜を破り、中へと侵入します。
この精子の運動を助けるのが精液です。精液の液体成分の60%は精嚢から分泌され、精子は運動に必要な栄養をこの精液から補給します。
また、酸性の環境である女性の腟内に入る時には、この精液が酸性の環境を中和し、精子の運動力を高めます。
精子のエネルギー源
精子に尿道球腺、前立腺、精嚢などからの分泌液が加わり精液となります。精液の約60%を占める精嚢液に
含まれるフルクトース(果糖)が精子の主要なエネルギー源となります。
精嚢液には子宮の収縮を促すプロスタグランジンも含まれ、子宮内での精子の輸送を助けています。
射精時に射出される精子の数は精液1mLにつき5000万~1億個ともいわれます。
1回に射精される精液の量は約3mL(茶さじ1杯分)といわれますから、たった1個の卵子に対して最大3億個もの精子が泳いでいく計算になります。
競争するほど燃える?
精子が卵子にたどり着いて受精するには、ある程度のまとまった数が必要だといわれています。
人間が競争心を駆り立てられて頑張ることがあるように、精子もまた、競争がないと卵子を探し出すことができないのかもしれません。
人間社会も精子の世界も、持てる力を発揮するのには「ライバル」の存在が必要なのです。
正常な状態では、精液1mL中に1億の精子が含まれるといいましたが、一般にこの数が4,000万以下になると
不妊症の可能性が高まるといわれています。さらに、精液1mL中の精子が2,000万以下のケースでは、
100%不妊症になるという研究結果が出ています。
精子の数を減少させるはっきりした原因の1つは熱です。成人してから風疹などにかかると不妊症になるといわれるのは、
高熱で精巣が温められて精子の製造ができなくなってしまうことによります。また、
抗生物質や放射線、鉛、タバコ、過剰なアルコールの摂取なども精子の発生を障害する要因になりうると指摘されています。
[引用出典]
『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』